別名・指示対象
- NTT
- 日本電信電話
- 電話会社
- 文脈によっては、NTTへ支払う電話料金や請求そのもの
概要
「みかか」は、NTTを指す日本のネットスラング・隠語である。
JIS配列の日本語キーボードでは、アルファベットのNキーに「み」、Tキーに「か」が割り当てられている。そのため、NTTをキー位置のかなで読み替えると、み・か・かになる。
N T T
み か か
仕組みは単純だが、この言葉には、電話回線を使ってコンピュータ同士を接続していた時代の生活感が沈殿している。
時代
主に、草の根BBS、パソコン通信、ダイヤルアップ接続が身近だった時代に広く使われた。
電話回線へ接続している時間が、そのまま通信料金・電話料金への不安につながっていた。NTTは、遠くにある抽象的な通信企業ではなく、コンピュータの利用時間に応じて請求書を送ってくる巨大な生活インフラだった。
そのため「みかか」は、企業名を隠す符号であるだけでなく、電話代、回線、請求書、長時間接続への恐れ、通信への依存をまとめて呼び出す言葉になった。
なぜ面白いか
キーボードの二重表記から生まれた
一つの物理キーに、アルファベットとかなが併記されている。その二つの記号体系のずれを使って、固有名詞を別の言葉へ変換している。
高度な暗号ではない。だが、機械の表面に印刷された別の読み方を見つけ、共同体の符牒へ変えるという意味で、小さなhackingである。
巨大企業を、幼い音へ縮める
「日本電信電話」や「NTT」という巨大で制度的な名前が、「みかか」という柔らかく意味不明な三音へ変わる。
この変換には、巨大インフラを自分たちの言葉へ引きずり下ろす働きがある。正式名称を避けることで、利用者は電話会社を少しだけ私物化し、からかい、距離を取ることができる。
料金の情緒を含んでいる
当時の接続は、現在の定額インターネットとは感覚が異なる。接続時間が伸びるほど、後から金額として返ってくる。
「みかか」という語には、通信できる喜びと、請求への恐れが同居している。
この標本が示す穴
「みかか」は脆弱性や不正突破そのものではない。
ただし、次のような構造を見せる。
- 公式の名称にも、別の読み方が潜んでいる
- 機械のインターフェースは、設計者が意図しない文化的利用を生む
- 巨大な社会システムも、利用者側の符牒によって読み替えられる
- 技術用語と生活感情は分離できない
ここで開かれているのはシステムの技術的な穴というより、名称と意味の継ぎ目である。
みかかの鉄人への敬意
みかかの鉄人 は、電話会社、電話サービス、通信料金、PHSなどに関する情報を長年にわたり収集・公開してきたWebサイトである。
同サイト自身も「みかか」の語源を、キーボードの「み」「か」「か」のキーに、それぞれN、T、Tが書かれていることに由来すると説明している。
当サイトは「みかかの鉄人」と同一のサイトでも、その後継を名乗るものでもない。しかし、電話・通信を利用者側から調べ、記録し、公開してきた先達として、明確な敬意を表し、ここにリンクを置く。
巨大な電話システムを、利用者の側から観察し、言葉と資料で手元へ引き寄せる。
その態度は、この蒐集棚が受け継ぎたいものの一つである。
私の記憶との接続
私にとって「みかか」は、単なる古いネットスラングではない。
中学生の時代にテレホンカードの偽造を自分で試した経験、NTTの仕組みや社会システムの穴への関心、現在のFlipper Zeroや発信者番号偽装への関心までを、一つの線でつなぐ言葉になり得る。
当サイトでは「みかか」を、既存の通信文化への懐古だけではなく、次の問いを現代へ持ち越すための重要な標本として扱う。
社会システムは、何を本物として信用しているのか。
関連標本
- NTT
- 電電公社
- パソコン通信
- 草の根BBS
- ダイヤルアップ接続
- 電話料金
- みかか代
- みかかからのラブレター
- 公衆電話
- テレホンカード
- みかかの鉄人
- キーボード配列
- 符牒
- インターネット老人会